マザーボードのコンデンサ交換に必要な物のまとめ


 いままでマザーボードのコンデンサの交換依頼を頂いた方から、「どのような道具を使っているのか」という質問をよく頂きます。そこで、簡単にではありますが、私が使っている道具をまとめてみました。

ハンダゴテ

31Mo4iEE5lL.jpg 何はなくともハンダゴテが無いと始まりません。

この時注意していただきたいのが、普通の電子工作用に売られている20W-30Wのハンダゴテではマザーボードのように大きくそれ自体が放熱版の役割も兼ねている基板には歯が立たないということです。特にコンデンサをとり外す際に、マザーボード自体が熱を分散させてしまい、ハンダが溶かせない、という事が起こります。

 そこで私は、写真のgootのTQ-95というモデルを使っています。これは手元のスイッチで15Wと90Wを切り替えられるハンダゴテで、90Wに切り替えるとマザーボードからコンデンサを取り外すときにも非常にスムーズに作業が行えます。

 ただし通常の電子工作で90Wで使用するとあっという間に基板のパターンを破壊しますので注意!


コテ先クリーナー

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 ハンダゴテのコテ先は作業中に何度も汚れを拭ってやる必要があります。
使い方は簡単で、作業前にこの黄色いスポンジを水で濡らしてやります。作業中にコテ先が汚れてきたらこのスポンジの上で何度かコテ先を拭います。また多くのコテ先クリーナーはハンダゴテスタンドも兼ねています。私が使っている物は、写真のgootのST-30です。


半田吸い取り線

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 マザーボードからコンデンサを取り外した後にスルーホールに残ったハンダを吸い取るのに使用します。
これが有るのと無いのでは後の作業効率に大きく影響します。ハンダ吸い取り線を吸い取りたい場所に押し当て、その上から熱くなったハンダゴテを当てることによりハンダを吸い取ります。 ハンダを吸い取った部分はニッパで切り取って処分します。従ってハンダ吸い取り線は使い捨てです。私が使っている物は、gootのCP-2015です。


ハンダ吸い取り器

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 こちらはハンダ吸い取り線ではなく、吸い取り器です。
ハンダ吸い取り線でも吸い取れなかったスルーホール内部のハンダを吸い取るのに使います。取り扱い説明書には、表から使用するように書いていありますが、マザーボードのように厚みのある多層基板では裏から使用したほうが効果的です。私はgootのGS-108を使用しています。


ハンダ

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 マザーボードのコンデンサを交換する場合には、通常の電子工作用のハンダではなく「両面プリント基板用」のハンダを使います。これは共晶ハンダという物で、融点が低く(183°)、サラサラとしているためにスルーホールの奥までスムーズに入り込み、なおかつ温度が下がると一瞬で固まるという特性を持っています。写真の商品はgootのSD-61です。


コテ先

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  コテ先は消耗品です。通常の電子工作の場合にはそれほど頻繁に交換する必要はありませんが、マザーボードのコンデンサ交換ではハンダゴテを高温に設定して作業する時間が長いため、あっという間にコテ先が寿命を迎えます。コテ先が寿命を迎えると、先が細くなったり変形したりするほか、コテ先のメッキが剥がれたり酸化したりしてハンダがスムーズに乗らなくなります。そうすると作業効率がかなり低下します。そこで私はマザーボード2、3枚を目安にコテ先を常に新品に取り替えるように心がけています。
 私が主に使用するのはTQ-77RT-Bですが、場合によって先が細いTQ-77RT-SBを使い分けています。


フラックス洗浄剤

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 半田付けを終えた後のマザーボードにはハンダに含まれるフラックスが付着しており、見た目にもよろしくない上信頼性も低下させますのでこれを用いて洗浄します。写真の商品は、gootのBS-R20Bです。


テスター


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 コンデンサを取り付けた後に、きちんと取り付けられているか、ショートを起こしていないかを調べるために使います。高い物から安い物までいろいろありますが、導通と直流電圧さえチェックできればどんなテスターでも構いません。


ニッパ

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 コンデンサを取り付けた後に余分な長さの脚を切るのに使います。


コンデンサの取り外し方

 実はコンデンサの取り外し作業は、コンデンサの取り付け作業よりも難しいかもしれません。
多くの方が初めてコンデンサの取り外しに挑戦する際「ハンダが溶けない!」と口をそろえて言います。確かにマザーボードにハンダゴテを当てただけではハンダゴテをいくら高温にしても元のハンダは溶けない事があります。
そして、いくら溶けないからといって長時間高温になったコテを当て続けるとマザーボードの配線パターンやスルーホールを壊してしまい、回復不可能になってしまいます。

 実は、マザーボードからコンデンサを取り外すのにはコツが必要で、このコツさえ掴んでしまえばまったく難しいものではなく、なおかつ長時間ハンダゴテを当てなくともすぐにコンデンサを取り外せます。
 それは「追いハンダ」です。

DSCF8472.jpg 写真のように、マザーボードのハンダを溶かしたい箇所にハンダゴテを当て、すぐに新しいハンダを流し込みます。すると新しいハンダが古いハンダに馴染むように溶け、あっという間にマザーボードのハンダが溶けてくれます。こうするとマザーボードを傷めることなくコンデンサの取り外しが行えるのです。これはマザーボード以外にも、プリント基板から部品を取り外す際の基本です。

ジャンクのマザーボードを買ってきて練習するのが吉

 失敗してマザーボードを壊してしまったらどうしようと心配される方は、はじめから壊れているジャンクのマザーボードを数百円で購入してきて練習するのが吉です。まずはハンダが溶ける感覚などを体で覚えるのが良いと思います。ジャンクのマザーボードとはいえ、単にコンデンサが壊れているだけの物もあり、中には交換したら直ってしまった、というものもあるようで、練習ついでに数百円で手に入れたマザーボードが直ってしまったら大変お得ではないでしょうか。

まだまだ作業は続きます。


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 今日はとある企業の方から、コンデンサが液漏れを起こしたマザーボードが6枚届きました。
コンデンサ108本の交換のご依頼です。

 まだ、交換用のコンデンサが届いていないので、今日はとりあえず古いコンデンサを取り外す作業に取りかかりたいと思います。
 交換が完了したらまたブログ書きます。
 最近は、企業の方からまとめてご依頼を頂く事が多くなりました、
本当にありがとうございます。

マザーボード修理 ~DELL Dimension 8400 3枚目~


 今回のご依頼は久々にDimension 8400のマザーボードです。これで3枚目だと思います。
いずれも前回、前々回と同じ箇所のコンデンサの交換だったわけですが、依頼者様曰く「長年使っていたパソコンが不調のため近くのショップで診断してもらったところコンデンサがやられているとのこと、自分で交換を試みたがうまくいかず、最後の望みをとこちらのサイトにたどり着いた次第です。」とのことで、ご依頼を頂きました。

 交換箇所は以下の5箇所になります。

赤:10V 1000μF 10φ×5本 緑:6.3V 2200μF 10φ×1本

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 さて、前述の通り依頼者様ご自身でコンデンサの取り外しを試みたとのことで、マザーボードをよく見てみますと、コンデンサ自体の取り外しはなんとか行えていたものの(取り外したコンデンサはセロテープで固定されていました)、スルーホールの中に古いコンデンサの足が詰まったままになってしまっています。これを取り除かない事には新しいコンデンサを取り付ける事が出来ません。
IMG_5734.jpg このスルーホールに詰まった足の除去がとても厄介な作業なわけですが、今回は融点の低いハンダをスルーホールにジョボジョボと大量に溶かし込みながら、裏から吸引、という技を使って、時間はかかったものの無事除去する事ができました。

使用するコンデンサ、いずれもサンヨーのWGシリーズになります。
6.3V 2200μF 10φ×1本、10V 1000μF 10φ×5本の計6本を使用します。

IMG_5742.jpgDimension 8400ではお馴染みの箇所、メモリスロット付近にある5本とIMG_5744.jpgチップセット付近1箇所を交換しました。

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 取り外したコンデンサ。いずれも2004年製造で、液漏れしていたコンデンサは1本のみでしたが、それでもパソコンの不調を引き起こしていたようです。
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マザーボード修理 ~ECS GeForce6100SM-M編~


 今回のご依頼はマウスコンピュータのデスクトップPCで、マザーボードにECSのGeForce6100SM-Mという物が使われているモデルです。

 依頼者様曰く「XPのロゴマークの起動段階で電源が落ちてしまう症状が発生する、しかしソフトの資産等のためもうしばらくXPマシンを使い続けたい。」とのことでご依頼を頂きました。

 ECSのGeForce6100SM-Mは2006年10月発売のマザーボードで、古いといえば古いのですがコンデンサが寿命を迎えるには少し早いかな、という気もしなくもない感じです。ところがマザーボードを実際に見てみて納得しました。

 確かにCPU周辺のコンデンサを中心に膨張が見られ、問題のコンデンサは台湾OST社製のコンデンサが使われていました。これなら寿命が若干短くなってしまうのも納得できます。

交換するコンデンサは以下の12箇所です。膨張を起こしているのは赤枠のコンデンサ9本で、すべて台湾OST製です。緑の箇所は日本ケミコン製のコンデンサが使われており、膨張はまだ起こしておりませんでしたが、CPUの電源回路のコンデンサですので時期的にも交換したほうが良いと判断し、併せて交換対象としました。

 しかしながら、大きな電力を消費するCPU側のVRM2次側コンデンサに1800μFのコンデンサを6本しか使わない、というのはすこし心細い気がします。OSTのコンデンサは負荷がかかるとすぐに液漏れを起こしてしまう事で有名ですから、このマザーボードで液漏れを起こしたのもその辺も関係しているのではないかと見ています。

赤:6.3V 1800μF 緑 16V 1800μF

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取り外したコンデンサ。派手な液漏れは見られませんでしたが微妙に膨張していました。
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交換に使用するコンデンサ。すべてサンヨー(現SUNCON)製のWGシリーズです。
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まずはじめにCPU周辺の9本のコンデンサを交換しました。鉛フリーハンダを用いたマザーボードでしたので、作業が難航するかと思いましたがあっさりと交換できました。
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続いてPCI Expressスロット付近のコンデンサ2箇所の交換です。
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最後にメモリスロット側の1本を交換します。
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それでは、動作確認を行います。

BIOSが無事起動しました。
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コンデンサの交換前にはここで電源が落ちていたとされるXP起動画面。コンデンサ交換後は電源が落ちる事もなくなりました。
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 無事にログイン画面まで到着しました。
この後何度か起動試験を繰り返しましたがいずれも問題が発生することなく起動に成功しました。
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今回のご依頼は本体ごとの送付でしたのでマザーボードを筐体に組み込み、再組み立てを行います。
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 この後パソコン本体は依頼者様の元へと返送されました。
今回はコンデンサ交換のご依頼を頂き、ありがとうございました。

マザーボード修理 ~DELL Optiplex GX260 11台目~


 引き続き、今度は別の企業の方で、やはり過去に何度もGX260のコンデンサの交換のご依頼を頂いている企業の方からまた依頼を頂きました。ありがとうございます。

 毎回DELLのマシンを見ていて思うのですが、マザーボードを取り出すまでに取り外すネジの数が他のパソコンに比べて圧倒的に少ない。この辺の設計は感心させられるばかりです。

 それにしても、企業で使われているパソコンって、とても長持ちしますね。頻繁な電源のON/OFFが無い事が長持ちの秘訣なのでしょうか。Optiplex GX260は2002年発売ですから、コンデンサが液漏れを起こして使えなくなるまでかれこれ9年動いてたってことですね。

さて、今回もGX 260ですが、毎回同じ箇所のコンデンサが液漏れを起こしています。

分解途中の写真です。毎回分解を行う際には再組み立ての時にスムーズに組み立てられるようにデジカメで細かく記録しています。分解途中ですでに液漏れコンデンサが見えています。
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マザーボードを取り外したところです。
交換するコンデンサは以下の11本で、CPUの周りにある10本とメモリスロットの付近にある1本です。
いずれも6.3V 2200μF 10φのコンデンサです。
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CPU周辺のコンデンサ。派手に吹いています。
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メモリスロット付近のコンデンサ。こちらもかなり漏れていますな。
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使用するコンデンサ。
やはりサンヨーのWGシリーズです。すべて6.3V 2200μF 10φの物を利用します。
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早速CPU周辺から交換です。
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最後にメモリスロット付近のコンデンサを取り付けて完了。
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動作確認を行います。
無事BIOSが起動し・・・、
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続いてWindowsの起動にも成功しました。
動かなくなったパソコンが息を吹き返した瞬間です。
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取り外したコンデンサ。2002年製造でした。
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この後パソコンは依頼者様の元へと返送されました。
今回もご依頼、ありがとうございました。