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TUBE MPの真空管を交換 ~結果、ノイズが激減~


TUBE MP改善計画 第2弾

本日は前回のコンデンサ交換に引き続き、TUBE MPの真空管の交換ネタでございます。

前回のコンデンサ交換では、小さな音にまとわりつくザラザラとしたノイズが無くなったのですが、依然としてホワイトノイズ(熱雑音)がかなり残っていましたので、ひょっとしたら犯人は真空管かも? と狙いを定めていたわけです。

早速真空管を購入

これが今回購入した真空管「GT-12AX7R」です。サウンドハウスから取り寄せました。スペック的には12AX7です。Groove Tubesは主にギターアンプ用の真空管を取り扱っている業者なのですが、数多くの真空管の中からクオリティや特性ごとに真空管を一本ずつ厳選して販売しているそうです。

なお、Groove Tubesで取り扱っている真空管はオーディオ用としても広く使われている真空管ですので、ギターアンプにしか使えないというわけではありません。

GrooveTubes-12AX7-R.jpg 古い真空管(左)と新しい真空管(右)
よく見るとゲッター(真空管上部の銀色に光っている部分)が古い真空管では残り少なくなっている事がわかるとおもいます。このゲッターと呼ばれる物は、真空管内部で発生するガスを吸着することで真空度を保つ役割があるそうなのですが、真空管を使い込むとこれが徐々に少なくなってきて、しまいには真空度を保てなくなり性能が落ちていくそうです。

12ax7.jpg

真空管の交換は電球の交換並に簡単です
 と、その前にTUBE MPの分解方法ですが、至って簡単です。両側面のネジを外すと本体が簡単に開きます。注意点は、ネジを外した後に後ろ側(コネクターが並んでいる方)から開くことです。このとき、開きづらいからといって力任せに開けようとすると中のフラットケーブルが切れます。(開きづらいのはこのケーブルのせいです)
tubemp_open.jpg
 TUBE MPを分解するとソケットに装着された真空管が見えます。これを慎重に引き抜き、新しい真空管を差し込みます。注意する点ですが、使用直後の真空管は高温になっています。火傷防止のために真空管に触れる場合には電源を切ってしばらくしてから触れて下さい。
tubemp-inside.jpg真空管を装着した後は分解した時と逆の手順でTUBE MPを組み立てます。

ホワイトノイズが激減!

 では早速試聴といきましょうか。
今回はギターからTUBE MPに直接接続し、その後は何もエフェクターを接続していません。つまりTUBE MPは単なるDI兼プリアンプとして動いています。ピックアップはシングルコイルにセット。簡単なアルペジオを弾いたものを古い真空管と新しい真空管の両方で録音し、比較しました。
 なおパソコン用のスピーカーなどではノイズが聞こえない場合があります。その場合にはモニターヘッドフォンなどをご利用下さい。

古い真空管

新しい真空管

 いかがでしょうか?
新しい真空管の方は、若干音がクッキリして明るくなっていませんか?
さらに古い真空管のほうではハッキリと「サーーーーー」というホワイトノイズが目立つのに対して、新しい真空管の方ではホワイトノイズが激減しています。なお、「ボーーーー」という音はピックアップのノイズでありTUBE MPのノイズではありません。

TUBE MPは改造の土台にもってこいの機材です


 
かつては定価が26000円ちょいだったTUBE MPですが、現在はサウンドハウスにて5,800円で売られています。私は560円でコンデンサを取り替え、2000円で真空管を取り替えました。3000円以内の出費で音がかなりクリアになりノイズが少なくなったので、これはコストパフォーマンスが高いと言わざるを得ないのではないでしょうか。
 また、音楽をやらない人でも個人でのネットラジオ配信を行っている人は多いと聞きます。そして、ワンランク上のマイクをそろそろ・・・と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そういった方々にもおすすめできる機材です。(改造の有無は関係なしに)
関連エントリ

TUBE MPの音質はコンデンサの交換を行ったことでどう変化したか


1月27日のエントリで寿命を迎えたコンデンサの交換を行いTUBE MPを格安で復活させた事をお伝えした時に、同時にノイズが減少し音質が改善されたと書いたのですが、コンデンサ交換前の音源ファイルを見つける事ができなかった為に実際の音をお聴かせすることができませんでした。

しかし先日MacのHDDを漁っていたところ運良くTUBE-MPのコンデンサ交換前の録音物を見つけることが出来ましたので、皆様の参考になればと思いこのエントリを書く事に致しました。

※コンデンサ交換前の音源は、もちろんTUBE MPが故障する前に録音された音源です。

TUBE MPの二つのノイズ

さて、TUBE MPが発するノイズには大きくわけて2種類あります。

ひとつは「サー」という常時発される真空管の熱雑音、もう一つは電源系統のノイズです。コンデンサを交換することでほとんど聞こえなくなったノイズは後者のノイズです。

私は主に、エレキベースやエレキギター、マイクなどをTUBE-MPに接続して使用しています。そして、TUBE MP購入当時から安価で手軽に音圧が上がる装置として重宝していたのですが、ひとつだけ気になる点があったのです。

それは、マイクに向かって囁いたとき、ギターやベースを軽くピッキングした時など、いわゆる微弱な信号を入力した時にその信号にまとわりつくように「ササッ、ササッ」というノイズが載るのです。

百聞は一見に、いや百読は一聴にしかずというわけで、運良くコンデンサ交換前の音源を発見できましたので、実際に聴いてみて下さい。なお、パソコンに付属のスピーカーではノイズがよく聞き取れないかもしれません。そのときはモニターヘッドフォンなどを使用してみてください。

waveform_oldcapacitors.png

 

おそらくこれはピックか指のどちらかが弦に軽く触れてしまった時の音だと思います。聴き取り易いように編集して音量を上げていますが、実際は非常に弱い信号です。短い音源ですが、ベースの音が鳴った時に「ササッ」もしくは「ザザッ」というノイズも一緒に混入している事がわかると思います。

コンプレッサを併用することでノイズはますます深刻になる

私は元々ロック系の曲を中心に制作していますので、ほとんどの場合は大きな信号ばかり入力させており、そのときには上記のようなノイズはマスキングされて消えてしまうのですが、それでも弱いピッキングや囁くようなボーカルなど弱い信号が必要になる時があります。そんな時にそのノイズが出てくるばかりではなく、TUBE MPのすぐ後ろに接続されているコンプレッサがそのノイズをより一層増幅させてしまっているのです。

そこで私は、安物故の宿命だと思ってできるだけ小さな信号を入力させないように使ってきました。

コンデンサの交換を行うことで音質は飛躍的に改善した。

しかし、コンデンサの交換を行った後に再びTUBE MPの音を聴いてみてびっくりしました。微弱な信号にまとわりつくようなノイズがまったく聞こえないのです。

これも百読は一聴にしかず、ということで、ベースの弦にピックを軽く当てて録音してみました。先ほどの音声サンプルと比較してみてください。この音源も編集によって音量を上げていますが、元々は弦にピックが触れるか触れないかという具合にピッキングしましたので、非常に微弱な信号です。さらに今回は音が減衰するまで、またフレット上で指を動かした時の微弱な音まで録音してみました。

waveform_newcapacitors.png

 

いかがでしょうか。最初から聞こえる熱雑音はしょうがないとしても同じTUBE MPとは思えないほどクリアに録音されていると思いませんか?

ただし、一つだけ録音条件が異なっている点がありまして、TUBE MPのコンデンサを交換した後にベースの弦も張り替えました。その点だけはご了承下さい。

日本のコンデンサの質の良さを改めて思い知らされた

さて、私が交換を行ったコンデンサは電源部に使われているコンデンサ3本で、オーディオ用の高級なものではなく、電源用に使われているごく一般的な物です。かかった経費も送料込みで590円だけでした。

たったこれだけの投資で音質が見違えるように変化したわけですから、元々取り付けられていたコンデンサの品質が如何に悪かったか、また日本のコンデンサの品質が如何に良いかを思い知らされました。

さらなる上を目指して

次の課題は真空管の熱雑音です。ボーカルやアコースティックギターのソロを録音する場合にこの熱雑音は非常に邪魔な存在になります。これは真空管をもっと高級な物に変えることで改善できるのではと考えています。また、電源部のコンデンサもオーディオ用の高級品に変えてみて、さらに音質がどう変化するのかこのブログで改めて書いていければ良いと思っております。

TUBE MPの修理は無事完了しました。


Tube MPのコンデンサがとうとう寿命を迎えたらしい。のエントリでお伝えしたとおり、電解コンデンサが真空管の発熱によって死亡してしまったTUBE MPですが、本日注文したコンデンサが届きましたので、早速交換を実施しました。

届いたコンデンサ。送料込みでたったの590円。決して高級品ではないが日本製なので信頼性は高いはず。
DSCF2980.jpg

早速TUBE MPの基板から古いコンデンサを取り外す。どうやらスルーホール基板のようである。
DSCF2981.jpg

新しいコンデンサを半田付けしたところ。古いコンデンサと同規格品ではあるが、若干サイズが大きい・・・
DSCF2999.jpg

TUBE MPに入っている真空管。これが熱に弱いコンデンサのすぐ隣にあるのである(汗)
DSCF3004.jpg

修理が完了し、再び命を吹き返したTUBE MP。驚いたことに、交換したコンデンサは決して高級品ではないにもかかわらず、ノイズがさらに低減していた!
なによりも、たった590円の出費で以前よりもボーカルが明瞭に録音されるようになったのがうれしい。
DSCF3009.jpg

となると、今度は真空管をより高級な物へと交換したい欲が出てきてしまった・・・

2009年11月16日追記:

コンデンサ交換前と交換後の音質比較記事を書きました。
→TUBE MPの音質はコンデンサの交換を行ったことでどう変化したか

Tube MPのコンデンサがとうとう寿命を迎えたらしい。


今日は久々にボーカル録音を行おうと思い、マイクからDigital Performerに信号を送ろうとしたその時だった。

マイクに向かって歌った信号はDigital Performerに記録されたものの、再生してみると聴くに堪えない雑音が混入しており、波形を確認すると通常の音声信号ではまずあり得ない信号が記録されていた。

これがその時の波形である。
信号のプラス側(上側)には信号が行っているものの、マイナス側にはほとんど行っておらず、さらに鋭い立ち上がりを見せたかと思うと急激に減衰する、ということを繰り返している。これは通常人間の声をマイクで録音した場合には起こりえない。

signal_bad.png

ちなみに、正しい人間の声の信号は次の図のようになる。

signal_good.png

そこで、一番疑わしいTube MP(真空管マイクプリアンプ)の分解を決行してみたところ、案の定電解コンデンサが死亡していた。

tubemp_capacitors.jpg

画像を見て頂くとわかるとおり、一番左のコンデンサの頭頂部が膨らんでおり、さらにその周辺のコンデンサには吹き出した電解液と見られる茶色い液体が付着している。

さらに、Tube MPは両手に収まるほどのサイズのケースに真空管とこれらの電子回路が収められており、実際にこれらのコンデンサの上部のスペースには実際には真空管が収まるのだ。そして真空管は内部のフィラメントに通電し電極を加熱することによって初めて真空管として働く。すなわち真空管は使用に際して高熱を発することを避けられない宿命にある部品なのである。そんなものが熱に弱いコンデンサのすぐ側に配置されているのだから、コンデンサが死んでしまってもおかしくはない。

Tube MPは決して高い製品ではなく、今なら新品で一万円もせずに買えるのだが、そんなことをしては、少年時代の愛読雑誌が「子供の科学」と「ラジオの製作」であった元ラジオ少年としてのプライドが許さない(笑)

そこで早速コンデンサを注文した。

注文したのは三栄電波というサイト。ここで2200μF/16Vの電解コンデンサ2本と、1000μF/35Vの電解コンデンサ1本を注文した。

かかった経費は送料込みでたったの590円。これで直ればしめた物である。

ちなみに、電解コンデンサはピンからキリまであり、高い物ほど特性に優れ、また高熱にも耐えることができる。通常これらの高いコンデンサは高級オーディオなどに使用されており、オーディオマニアによると、使用されているコンデンサの違いも音質の善し悪しを決める要因になり得るのだという。

さらに私がどこかの雑誌で読んだ話では、スーパーファミコンの映像出力回路のコンデンサを高級な物と交換し、画質の改善に成功したゲームマニアも居るらしいのでたかが電解コンデンサといって侮ることはできない。

TUBE MPの名誉の為に言っておくと、TUBE MPは初期状態ではノイズが多い製品ではあるが、真空管を交換することによりまるで別の製品になったかのように音質が改善される。さらに「マイクプリアンプ」と称しているが実際にはエレキギターやエレキベースなどにも接続することができ、真空管独自の特性で、音が「ボワッ!」と図太くなるのである。

最後に、手前味噌で申し訳ないのだが、北斗の拳のバトルボーナスのBGMを弾いてみたMP3でも録音時にギターとベースにTUBE MPを通してあるので、興味のある方は是非聴いて頂ければ光栄である。