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MacBook Pro 15インチ(Mid 2012) レビュー


先週の事ですが、MacBook Pro 15インチ(非Retinaディスプレイモデル)を購入しました。 今まで使っていたiMac early 2008からの買い替えになりますので、iMacとの性能比較を主にレビューを書いてみようと思います。

購入機種

MacBook Pro 15インチ Core i7 2.3GHz (MD103J/A)

  • 8GB RAM / 500GB HDD
  • 標準解像度ディスプレイ
  • JISキーボード

開封の儀

新品MacBook Proの匂いにつられてやってきた猫。

付属品は至ってシンプルで、ACアダプタと簡単な説明書、ディスプレイの汚れを拭くためのクロスが付属します。説明書は説明書というよりはぺらぺらの紙になっていて「このMacBook Proはあなたのために生まれました」という冊子もありませんでした(汗)

購入の動機

私はプログラミング用途にWindowsマシンを、音楽制作用途にMacを所有しているのですが、最近になってプログラミングの作業よりも音楽の制作の作業を行うことが多くなり、また、自宅で作業した続きを外のリハーサルスタジオに持ち出してそこで続きの作業を行うことが多くなりました。

主にリハーサルスタジオで行う作業はボーカルやギターの録音です。実は今までにも同様の作業を行っていたのですが、その場合には自宅のiMacのDigital Performerでトラックダウンした物を東芝のネットブックに取り込んでスタジオに持ち込み、フリーソフトのDAWを用いてボーカルやギターなどを録音してから再びMacへと録音したトラックだけをコピーするという面倒な手順を踏んでいました。

また、音楽の制作においては重いプラグインを多用することもあり、2008年モデルのiMacでは力不足を感じていました。そこで、メインマシンとして使う事も可能であり、ある程度の性能を有しつつ、自宅で作業中の物をそのまま外へ気軽に持ち出して作業の続きを行える携帯性も兼ねたマシンの購入を検討しており、MacBook Proの購入に至ったわけです。

ProかAirかでずいぶん悩みました。

当初はMacBook AirにするかMacBook Proにするかでずいぶん悩みました。実は私は音楽の制作以外にも趣味の小説を書くのにもMacを使っており、重量が軽く気軽に持ち運べるMacBook Airに惹かれていたのも事実です。

しかし、音楽の制作において重い処理を行うことを考えると、クアッドコアCPU搭載という点だけはどうしても譲れませんでした。MacBook Airは11インチ、13インチともにデュアルコアですし、MacBook Proも13インチモデルはデュアルコアです。従って必然的に購入機種はMacBook Pro 15インチに絞られました。

また、MacBook Airはメモリの増設が不可能ですからメモリが安くなったときに増設する事もできません。ストレージの交換はできるようですが、ユーザ自らストレージの交換を行ってしまうと保証が効かなくなってしまうというのもマイナスポイントです。

対して、MacBook Proの場合はユーザによるメモリ増設やストレージ交換が認められていて、Appleの公式サイトでも手順が公開されています。私の場合は最初はHDDで運用し、大容量のSSDが安くなったタイミングを見計らってSSDに交換する予定でしたので、この時点でMacBook Airは購入対象外になってしまいました。

結果的にMacBook Proの購入に至ったわけです。やはり重量の点では不満が残ることになりましたが、それでも性能には大いに満足しています。

あえて標準解像度ディスプレイを選択したわけ

MacBook Pro 15インチモデルはBTOで高解像度(1680×1050ピクセル)ディスプレイが選択できます。

私は最初、今まで使っていたiMacの解像度が1680×1050ピクセルであることから、MacBook Proも高解像度ディスプレイを選択すれば、iMacの環境を殆どそのまま再現できると考えました。また、Digital Performerはわりと広い画面のほうが快適ですから、やはり普段使い慣れている解像度の方が良いと考えていたのです。

ところが実際に高解像度ディスプレイを搭載したMacBook Proの実物をみて考えが変わりました。 残念ながら目が悪い私に、15インチで1680×1050ピクセルの解像度というものは字が小さくて長時間の作業は辛いと感じたのです。そこで標準解像度(1440×900ピクセル)のディスプレイを選択したわけですが、これはやはり正解だったと思います。

今まで1680×1050ピクセルの環境でDigital Performerを使っていて、これを一回り低い解像度の1440×900ピクセルで運用すると「あ、狭いな」と感じます。しかし、MacBook Proの場合自宅でじっくり作業をする場合には外部ディスプレイを接続して作業できるわけですから、標準解像度ディスプレイを選択したことは全く後悔していないどころか、目があまり疲れないのでむしろ快適です。

メモリはやはり8GB以上あったほうが良い

このMacBook ProはMountain Lionへの無償アップグレード対象機種でしたので、私も早速アップグレードしました。 そして、Mountain Lionを起動してみてアクティブィティモニタを見てみると、なんと起動直後に2GB前後のメモリを消費していました。最小構成の4GBではせいぜい残りの2GBがフリーエリアということで、DAWを走らせたりタブを大量に開いてWebブラウジングを行うには少々キツい物があります。

やはりメモリは最初から8GBにしておいたほうが良いと思います。私は最初に4GBのモデルを購入して後で安いメモリを購入して増設しましたが、メモリ増設の際に外そうとした裏蓋のネジが以外とキツく、少しねじをナメてしまいました。外観を気にする方は最初からメモリを8GB搭載した状態で発注したほうが精神衛生上よろしいかもしれません。

また、Appleの公式ではこの機種に搭載できるメモリの最大容量は8GBとのことですが、実際には16GB搭載できるようです。

iMac Early 2008との比較

ウェブブラウジング

私がメインで使っているブラウザはGoogle ChromeとFirefoxで、場面によって使い分けています。 iMacではどちらのブラウザももっさりとした動きをしており、快適とはいえませんでした。特に私は大量のタブを開いてウェブブラウジングを行うことが多く、そうなるとタブの切り替えやウィンドウの切り替えがかなりもっさりとします。

ところがMacBook Proのほうではどちらのブラウザもサクサク動きますし、ユーザーインターフェースの反応も機敏です。さらに、iMacでは10枚もウィンドウを開けばExposéのフレームレートがガタ落ちしてカクカクとした動きになっていましたが、MacBook Proではそれが発生しません。

また、Mountain LionではSafariがかなり高速化したと聞いたので私もSafariを試してみましたところ噂通り爆速でした。さらにSafariとマルチタッチジェスチャの組み合わせはかなり強力で、ピンチアウト・インによるスムーズな拡大・縮小、2本指による滑らかなスクロール、これらが本当に快適に動きます。

実際、ウェブブラウジングに至ってはほぼマウスを使わずに快適にこなせます。まるでiPadを操作しているかのような感覚です。これならSafariをメインブラウザにしても良いな、と思いました。

Digital Performer

私がメインで使っているアプリケーションです。そして今回このMacBook Proを購入した目的の9割はDigital Performerです。 Digital Performerはバージョンが2.7の頃からお世話になっていて、MacがまだG3の頃から使っていました。

去年、音楽制作マシンをPower Mac G4からiMacに切り替えたときにもそのパフォーマンス向上に衝撃を受けたのですが、今回iMacからMacBook Proに切り替えてみて、またまた衝撃を受けました。

現在制作中のプロジェクトはコンプレッサやキャビネットシミュレータを大量に使う重たいプロジェクトなのですが、iMacでは重たくてどうしようもなかったものが、MacBook Proでは何の苦もなくサクサクと動きました。プロジェクトのロード時間もMacBook Proのほうがかなり高速でした。

こちらは、同じプロジェクトをMacBook ProとiMacで再生したときのパフォーマンスメーターの表示とアクティビィティモニタのCPU使用率の表示になります。公正を期すためにどちらも同じオーディオインターフェースとドライバを用いて、バッファサイズは256サンプルに設定しました。

 Digital PerformerのAudio Performanceの表示に限って言えば、およそ2倍の性能向上ということになりますが、実際にはそれ以上の性能向上がありました。 アクティビティモニタの方を見ていただくとわかりますが、iMacの方は再生中にほぼCPUの使用率が天井張り付きになります。これはオーディオ処理以外にもDigital Performerの画面周りの描画処理でCPUが食われるからで(実際にプロジェクトを再生中はDigital Performer以外にWindowServerプロセスが大量にCPUリソースを食いつぶしていた)、実際にこのプロジェクトを再生するとiMacではミキサーのレベルメータ表示の動きがカクカクになり、ユーザーインターフェースの反応も極端に悪くなります。

対して、MacBook ProのほうではまだまだCPUの能力に余裕があるように見えますし、実際にこのような重いプロジェクトを再生してもレベルメータはスムーズに動き、ユーザーインターフェースの反応も重くなりませんでした。さらに、CPU使用率を見ていただくと分かるとおり、Core i7本来の4コアに加えHyper-Threadingにより認識されている仮想4コアにもきちんと処理が割り当てられています。

これだけでも今回MacBook Proを購入した価値はあったと思います。 最後に、このプロジェクトのバウンスにかかった時間です。やはりMacBook Proが圧倒的に速いです。

ベンチマーク

比較対象として、本機のほかにPhenom II X4 945(3.0GHzクアッドコア)を搭載した自作WindowsマシンとCore 2 Duo(2.4GHzデュアルコア)を搭載したiMac Early 2008を用いました。

Cinebench

まずはじめに実行したのがCinebenchです。 このベンチマークはCPUの性能とGPUの性能を測定できます。マルチスレッドに対応しているためマルチコアのCPUでの性能測定を行えるほか、あえてシングルスレッドでの実行に限定することでシングルコアでの性能を測定することもできます。

Windows版とMac版がありますので、自作WindowsマシンではWindows版を、MacBook ProとiMacではMac版を用いて測定しました。 CPUの性能測定ではマルチスレッド・シングルスレッドのどちらにおいても下の表のようにCore i7を搭載したMacBook Proの処理能力が高いという結果になりました。

次にOpen GLのベンチマークを実行し、GPUの性能測定を行いました。ただし、比較対象機種の自作Windowsマシンに載っているGPUはGeForce 210という2000円ぐらいのGPUですので性能は良くないです。

このテストでもGeForce GT 650Mを搭載したMacBook Proが一番高い性能を示しました。ついでですのでIntel HD Graphics 4000の性能も計測しましたが、GeForce GT 650Mには及ばない物の2008年モデルのiMacのGPU(Radeon HD 2400 XT)よりもずっと高い性能を示しました。

Hyper Threadingの効果が確認できた

Cinebenchのベンチマーク結果にはMP Ratioという項目があります。これはシングルコアで実行したベンチマークをマルチコア(マルチプロセッサ)で実行した場合にどれだけ性能向上するかの指標です。

たとえばあるテストを二つのCPUコアで実行したときに単一のコアのみで実行した場合と比較して2倍の性能向上が見られた場合にはMP Ratioは2になります。 通常、マルチコアでの理論値はそのコア数になりますが(たとえば2コアなら2倍)、実際にはスレッド管理のオーバーヘッドがありますので、実際の数値は理論値よりも少し劣ります。

下の図はCinebenchを実行した各マシンのCPUコア数と実際にどれだけの性能向上があったかを示すMP Ratioの値になります。

iMac Early 2008と自作WindowsマシンのMP Ratioはほぼ理論値に近い値となりました。いずれもMP Ratioの値が実際のコア数を超えることはありませんでした。 対して、MacBook Pro Mid 2012は4コアの CPUを搭載しているにもかかわらず、理論値よりも上の4倍以上の性能向上が見られました。

これはHyper-Threadingの働きにより、4コアのCPU上で8スレッドが効率よく動いたことを示しています。Hyper-Threadingのような機構を持たないCPUでは4コアのCPU上で8スレッドを動かしてもこのような性能向上は見られません。

CPUは基本的に一つのCPUコア内に複数の演算ユニットを持っているのですが、あるCPUコアの使用率が100%をキープしていたとしても実際には全部の演算ユニットが満遍なくフル稼働している事は稀で、瞬間で観測すると演算ユニットの使われ方に偏りが生じ、遊んでいる(使われていない)演算ユニットがあります。

そこで、OSに対してさも仮想的なCPUコアがあるかのように見せかけて、遊んでいる演算ユニットを他のスレッドから活用してやり、コア全体の使用効率を上げてやろうというのがHyper-Threadingの基本的な考え方です。

4コアのCore i7ですと、Hyper-Threadingの働きによりOSからは8個のコアがあるように見えます。8コアあるように見えるからと言って、単純にシングルコアの8倍の性能にはなるわけではありませんが、このように空いている演算ユニットが有効に使われることにより、実際のコア数以上の性能が出ることもあるわけです。

Super Pi

こちらは有名な円周率の計算プログラムです。MacではBootcampを用いてWindowsを走らせて測定しました。 BootCamp上のWindowsの電源設定で「バランス」を選択しました。つまり最高のパフォーマンスが出るようには設定していません。この設定にすると負荷が低いアイドル時はCore i7のクロックは1GHz前後になります。そして負荷がかかるとTurbo Boostが効く事もあり3.1GHz前後まで上昇します。対して自作Windowsマシンの設定はパフォーマンス重視とし、クロックは3GHzに固定されます。つまり、MacBook Proが幾分かのハンデを負っている形になります。

測定結果はCore i7を搭載したMacBook Proが104万桁の円周率の計算にかかった時間が11秒と、すばらしい性能を発揮しました。ただし、Intel系のCPUはSuper Piで競合他社のCPUと比較してもかなり高いスコアを記録することが知られていますのでこのスコアだけを以て総合的な性能評価を行うことはできないでしょう。

余談ですが、私が初めてパソコンを自作した時のCPUがTualatinコアのCeleronの1.2GHzで、円周率104万桁の計算に2分以上かかっていましたので、クロックあたりの性能の向上はすさまじいものがあります。

自作プログラムによるベンチマーク

著名なベンチマークの他に、私が自作したプログラムによるCPUの性能測定を行ってみました。こちらもWindows上での測定になります。 このプログラムはI’m Jugglamp EXといって、当サイトでも配布しておりますパチスロの出玉シミュレーションを行うプログラムです。このプログラムには数千万~数億プレイのシミュレーションを一気に行う機能も搭載されており、実行には若干の時間がかかるので、今回はその機能を用いてそれぞれのマシンでの実行時間を計測し、CPUの性能測定を行ってみました。

なおこの機能はCPUの機能をフルに使うわけではなく、主に整数演算と条件分岐、メモリのランダムアクセスが使用されます。また、マルチスレッドには対応していないためシングルコアあたりの性能測定となります。今回は一億プレイのシミュレーションにかかった時間を測定しました。

結果を見ていただくとわかるとおり、Core i7を搭載したMacBook Proがぶっちぎりの結果を残しています。 このプログラムはシングルスレッドですので、おそらくは実行中にTurbo Boostが効いてCPUクロックが3GHz前後まで上昇したと思われますが、比較的クロック周波数が近いPhenom II X4 3.0GHzの実行結果と比較してもそれでもなおクロックあたりの性能は高いと言わざるを得ません。

発熱など

通常の使用ではボディのファンクションキーの上あたりが若干生ぬるいかな?という程度ですが、負荷をかけるとかなり発熱します。 アイドル状態ではCPU温度が60度前後でファンの回転数も2000回転/分でしたが、Cinebenchの実行中にはCPUの温度が100度を超えました。Ivy BridgeのTjMaxは105度だそうですので、これでもまだスペック的には安全なのでしょうけど耐久性の面ではどうなのかな?と少し心配になりました。

なお、ファンが低速回転している間は騒音についてはまったく気になりません。ただ、CPUが高温になってからファンの回転数が上昇するのにはタイムラグがあります。どうもシステム的にはバッテリーの持ちやファンの耐久性を考慮してできるだけ回転数を抑える戦略になっているように見えます。

GPUの自動切り替えについて

また、省エネルギー設定で「グラフィックスの自動切り替え」を有効にしていると、低負荷時には電力をより多く消費するGeForce GT 650Mの代わりに省電力なIntel HD Graphics 4000が使用されます。そしてOpenGLを使用したりGPUに負荷をかけるプログラムを実行すると高性能なGeForce GT 650Mに切り替わります。

この切り替わりはとてもスムーズで、一瞬マウスカーソルがちらつくだけです。ただしGeForce GT 650M使用時にはやはり本体がそれなりに発熱します。 私の環境では、iPhotoを起動したりSkypeでビデオ通話を開始した際にGeForce GT 650Mに切り替わりました。

しかし、Skypeでビデオ通話を終了させても元のIntel HD Graphics 4000には戻りませんでした。これを元に戻すにはいったんSkypeを終了させる必要がありました。AC電源で駆動する場合には気にならないでしょうが、バッテリー駆動の場合には注意をしないとバッテリーの消費速度がかなり早くなります。

そこで、パフォーマンスは二の次でいいから常に省電力なIntel HD Graphics 4000のみを使用したいという場合もあるでしょう。この場合残念ながら省エネルギー設定にはそのようなオプションはないのですが、gfxCardStatusというユーティリティを使用することにより使用するGPUを固定することができます。

なお、Intel HD Graphics 4000が使用されている場合にはMission ControlやアプリケーションExposéのフレームレートが若干下がるようですが、GeForce GT 650Mの場合にはかなりスムーズに動きます。

不満点など

今のところ性能面では全く不満がありません。しかしハードウェア面での不満があります。

一つはテンキーが標準装備されていない点です。私がメインで使用するアプリケーションはDigital Performerなのですが、このアプリケーションは主要な機能がテンキー操作に集約されていて、テンキー無しでははっきりいって作業効率がガタ落ちします。

もちろんキーのカスタマイズを行うこともできるのですが、私はかれこれ10年以上Digital Performerと付き合ってきた為、Digital Performerの操作は体で覚えてしまっています。従って今更キーのカスタマイズをしたとしてもそれを頭に再びたたき込むのには時間がかかります。しょうがないから今のところはiMacのキーボードをわざわざ繋いでDigital Performerを使っています。

もう一つは内蔵スピーカーの音量バランスについてです。 購入当初からiTunesなどの音楽を再生する際にどうしても右のスピーカーからの音が大きく感じました。しかし、これはMacBook Proの仕様のようなもので、本体右側にサブウーファーが配置されているためにどうしても右からの音が大きくなってしまうのとのことでした。しかし、サブウーファーというのは本来100Hz以下の指向性を感じなくなる音域の音を主に鳴らすためにあるのでは・・・?

不具合みたいなもの

これはハードウェアの不具合なのかソフトウェアの不具合なのかはわかりません。 しかし、以下の条件を満たすと再現します。

  1. OS Xのユーザーアカウントが2名以上存在する。(メインユーザ+ゲストアカウント有効でも可能。)
  2. 省エネルギー設定でグラフィックスの自動切り替えが無効になっている。

この状態でアカウントからログオフすると、ログオンスクリーンに点滅する灰色の四角が現れます。 ちょうどマウスカーソルがある位置に現れるようです。

最初はGPUの不具合でこのような現象が起きているのかと思いましたが、Apple Hardwar Testを実行しても異常は報告されず、画面共有を用いてリモートで操作しても同様の現象が発生しましたので、ソフトウェアの不具合の可能性も否めません。まだ購入して1ヶ月も経っていないため、時間のあるときにアップルのサポートにでも連絡を取ってみようと思います。

総合評価

若干の不具合がありましたが、性能には概ね満足していますし、クアッドコアを搭載したパソコンが高々2キログラムのボディに収まってそれを自由に持ち運びができるとは、すごい時代がきたものです。MacBook Proの購入を検討されている方で、性能を重視する方はクアッドコアCPUを搭載したモデルを是非ともおすすめします。重量が重いという難点はありますが、それ以上の価値はあると思います。

余談になりますが、私のはじめてのノートパソコンはPC-9801NS(中古)で、学生時代はMS-DOS上のMIDIプレイヤー(MIMPIという名前だったと思います)を走らせてライブで打ち込みを流したりしていました。

MDR-CD900STで確実に使える変換プラグを紹介します。


ソニーのヘッドフォン「MDR-CD900ST」は本来業務用として開発されたヘッドフォンですが、その音質の高さや解像度の高さからiPod等で音楽をより楽しむ目的でも利用する方が近頃増えています。

ところがiPodなどの機器で使用しようと思った時に、一番のボトルネックになるのはプラグの大きさの違いではないでしょうか。本来なら変換プラグを使えばそのような問題はすぐに解決するのですが、MDR-CD900STの場合はすこし厄介です。

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ご存じの通り、iPod等のポータブルオーディオプレイヤーを始め、我々の身の回りにはステレオミニプラグを搭載した製品が溢れています。対してMDR-CD900STは業務用故にケーブルの先には標準プラグしか付いておらず、また製品パッケージには変換プラグの類は一切付属しません。

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そこで、当然のことながらiPod等の機器でMDR-CD900STを使おうとする場合には変換プラグを別途購入する必要があるのですが、実はこれには鬼門があります。それは変換プラグとMDR-CD900STの相性です。

「MDR-CD900STの片方の音が聞こえません!!!」というトラブルの原因の多くは変換プラグの相性です。

不思議なことに、他のヘッドフォンでは何の問題もなく使える変換プラグが、MDR-CD900STでは上手く使えないことが多々あります。そして多くの場合、相性の悪い変換プラグを用いると片方の音が聞こえなくなります。通常、ステレオプラグをモノラルジャックに差すとこのような現象が起きることがありますが、「ステレオ→ステレオ」の変換プラグでもこの現象が起きてしまうのです。私はこれで実際に数本の変換プラグを無駄買いしてしまいました。

そこで、本記事ではMDR-CD900STで確実に使える変換プラグを紹介したいと思います。

ズバリMDR-CD900STで確実に使える変換プラグはVictorから出ているAP-233Aという製品(写真左)です。このほかに、iPod touchをケースに入れて使う場合には、CN-M30-Bという延長ケーブル(写真右)があるとなおベターです。

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なぜ延長ケーブルがあるとベターなのか

 私はiPod touchをケースに入れて使っていますが、ケースによってはジャック周辺に設けられた穴の口径が小さく、微妙に邪魔になってしまい変換プラグが奥まできっちりと刺さりません。そこで、変換プラグとは別にプラグの根本が細い延長ケーブルが必要になります。

変換プラグのみでは奥まで刺さらない。

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 というわけで、変換プラグと延長ケーブルを両方組み合わせて使うと下の写真のようにうまく収ります。(ケースは赤いやつから透明な物に変えました。すみません)

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私は普段はこの方法でiPodを利用しています。さすがに外にiPodを持って行って音楽を聴く場合には付属のイヤホンで我慢しておりますが・・・。

ただし、この方法にもデメリットがあり、変換プラグの本体が微妙に邪魔で持ち運ぶ際に結構鬱陶しいということです。そこでMDR-CD900STをiPodメインで使いたい場合には思い切ってプラグを取り替えるという手もあります。(MDR-CD900STは業務用なのでイヤーパッドからドライバーユニット、プラグに至るまで補修部品を自分で取り替えられるようになっており、中には標準プラグからステレオミニプラグに取り替えてしまう人もいるようです)

まとめ

iPodでMDR-CD900STを使うには若干手間がかかりますが、一度この音に慣れてしまうと他のヘッドフォンには行けなくなります。解像度の高さ故から聞きたくない音まで聞こえてきてしまうという欠点はありますが(その辺のレビューは以前書いた記事をご覧下さい)

ちなみに私は、MDR-CD900STではMP3やAACの音質劣化が目立ってしまって気になるので、お気に入りのCDはすべてApple Losslessでエンコードし直しました。(流石に容量の関係から全部のCDというわけにはいきませんでした)

非AFTなHDDを今更ですが買ってみました。


ご存じの通り、現在HDDは1TBや2TBといった大容量の製品が一万円を切る値段で買えたりしてコンピュータユーザーにはウハウハな状況ですが、実はXPユーザーには罠があります。

現在出回っているHDDの多くは「AFT」(正確にはBigSectorと呼ばれる)という規格でフォーマットされており、このAFTでフォーマットされたHDDをXPでそのまま使うとパフォーマンスが低下するといった現象が発生します。

Windows VistaやWindows 7などはAFTに正式に対応しており、こういったパフォーマンスの低下は無いようですが、残念ながら私はAFTに正式対応したOSを使っておりませんので、今更ですが非AFTのHDDを買ってみました。

なお、AFTで物理フォーマットされたHDDでもジャンパピンを設定したり専用のツールで再アライメントを行うことによりAFT非対応なOSでもパフォーマンスを落とすことなく利用できるそうです。

というわけで、今回購入した物はコレです。HGSTの「HDS5C3020ALA632」現在では貴重な非AFTなHDDです。(それにしても長すぎる型番ですな)

回転数が5940rpmということで、現在出回っている7200rpmよりも回転数は劣りますが、そもそもデータ置き場&バックアップ用に購入したためスピードはあまり重視しないのと、HDDの温度が上がるのは精神的によろしくないためこれで満足です。
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ベンチマーク

さっそくベンチマークを取ってみました。

HDS5C3020ALA632_Benchmark.png

 シーケンシャルアクセスはデータ倉庫用としては十分過ぎる程速い数値が出ています。問題は極端に低い4Kブロックのランダムアクセス。可動部品を使ったHDDの宿命でしょう。OSの起動時間やアプリの起動時間はこの4Kブロックのランダムアクセスが大いに影響するそうです。これ以上の向上を望むのならSSDを買うしかありません。
今更HDDという気もするけど
 現在はSSDなどの高速な記憶装置が普及し始めていますが、ギガバイト単価で考えるとHDDの安さはやっぱり魅力的です。
おそらくSSDがいまよりもずっと安くなり、容量もそれなりに大きくなったら私もSSDに移行するかと思いますが、今のところはHDDで十分です。

Phenom IIのCPUクーラーを交換


Phenom IIのリテールクーラーがうるさい件

去年の6月にCPUをそれまで使っていたAthlon 64 3800+からPhenom II X4 945に変更して以来、付属するリテールクーラーの騒音に悩まされていました。冬の時期には回転数の上昇も穏やかだったためあまり気にならなかったのですが、今年の7月から気温が上昇、それに伴い付属のリテールクーラーは甲高い回転音を出すようになり、またCPUの温度も高負荷時にはかなり高めに出ることもあり、CPUクーラーを社外品に交換しました。結果的には大満足でした。

CPUクーラーの選定

社外品のCPUクーラーには大小様々な製品があり、冷却性能や静粛性も異なるようですが、あまり大きくて重い製品はいくら冷却性能が高くても避けようと思っていました。なぜなら重さでマザーボードがたわんでしまうかもしれないからです。実は今までにコンデンサの交換の依頼を受けた際、いくつかたわんで元に戻らなくなってしまっているマザーボードを見て以来重いCPUクーラーには恐怖心を抱いていました。

そこで今回はCOOLER MASTERのVortex Plusに決定しました。この製品は見た目こそ若干大きいですが、重さは445gとそれほど重くなく、これならたわみの心配もなさそうです。

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ヒートパイプってすごい

Vortex Plusには4本のヒートパイプがCPUに直接接触する形で配置されています。この機会ですからヒートパイプについて調べてみると、とてもすごい技術なのだということがわかりました。

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まず、CPUの冷却効率を上げようと思ったら、ヒートシンクをどんどん大きくすれば良いと思っていましたが、それだけではCPUの熱がヒートシンクの一部に集中してしまっていくら大きくしてもダメなんだそうです。つまり、大きなヒートシンクを効率よく使うには熱をヒートシンクの隅々まできちんと運んでやる必要がある、その為にヒートパイプが使われる、とのこと。

ヒートパイプの中は真空になっていて、中に液体が入っているそうです。次に、ヒートパイプの片方に熱が加えられると中の液体が蒸発して気化します。(中は真空になっているため、液体は簡単に蒸発するそうです) このときに発熱源から熱を奪います(気化熱)

そうすると今度はその熱を持った蒸気がヒートシンク側まで運ばれ、冷却されます。そこで気化していた蒸気が冷やされて気体から液体に再び戻ります。こうして冷やされた液体は再び発熱源の所まで戻り、また発熱源から熱を奪い、気化し・・・という事を繰り返して熱をどんどん効率よく運ぶ事ができる、ということ。

なるほど、だからiMacとかノートパソコンとかにも積極的に採用されているわけですね。

ヒートパイプすごいよヒートパイプ

参考サイト:https://www.heatpipe.co.jp/heatpipe.html


Socket AM3プラットフォームへの取り付けは至って簡単

クーラーの付属品には様々な金具やピンが付属しますが、Socket AM3プラットフォームに至ってはたった二つの金具だけで取り付けられ、難易度も高くありません。マザーボードの取り外しも必要ありませんでした。
また、シリコングリスも付属しています。(私はそれを知らずにわざわざグリスを別に買ってしまいました・・・)

たくさんのパーツが付属しているが・・・

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AM3マザーへの取り付けはこの二つのパーツだけで良い

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早速マザーボードに取り付けてみたところ。残念ながらメモリとヒートシンクが干渉してしまったため、メモリの位置を変えることによって回避した。IMGP0625.jpg

テスト結果

テストはエアコンが効いていない真昼の暑い時間帯(室温32度)に行いました。エアコンが効いていない、というより去年の秋にエアコンが壊れてそのまま放置してあるのです(汗)ですからアイドル時とはいえリテールクーラーの回転数はかなり高いことにご留意ください。

リテールクーラー

  • アイドル時 Cool’n’Quiet ON
    ファン回転数4299RPM CPU温度40度
  • アイドル時 Cool’n’Quiet OFF
    ファン回転数4470RPM CPU温度42度
  • 高負荷時
    ファン回転数5921RPM CPU温度60度
Vortex Plus
  • アイドル時 Cool’n’Quiet ON
    ファン回転数1819RPM CPU温度38度(リテール比-2度)
  • アイドル時 Cool’n’Quiet OFF
    ファン回転数1985RPM CPU温度40度(リテール比-2度)
  • 高負荷時
    ファン回転数2836RPM CPU温度51度(リテール比-9度)

結果を見て頂くと解るとおり、ファンの回転数がリテールクーラーの約半分であるにもかかわらず、高負荷時においての温度上昇がリテールクーラーと比べてかなり低くなっています。また、ファンの口径が大きく風量が多いため、CPUのみならずCPU周辺にあるVRMやチップセットなども冷却されるようです。さらに、高負荷時からアイドル時へ戻った際にリテールクーラーの時には温度が下がるまでにある程度の時間を要していましたが、Vortex Plusの場合にはすぐに温度が元に戻ります。これはすごい。

結果は大満足です

 こんな事ならCPUを買うときに一緒にこの製品を買っておけばよかったと思いました。
現在AMDのリテールクーラーがうるさいと感じている方には間違いなくおすすめできる製品だと思います。

MDR-CD900STについて語ってみる


今日は、ソニーのスタジオモニターヘッドフォン、「MDR-CD900ST」について語ってみます。
テレビなどで歌手がヘッドフォンをつけながらマイクに向かって歌のレコーディングを行っているシーンを見た事があるかたも多いかと思います。そのときにほぼ例外なく歌手の頭に装着されているヘッドフォンがそれです。

「またまた、そんな高そうなヘッドフォンの話なんかしやがって。どうせウン十万もするプロ用だろ」と今思った方、なんとこのヘッドフォン、プロ用機器ですが15000円前後で売られているのです。

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MDR-CD900STとの出会い

元々私は過去に通信カラオケの演奏データを制作する仕事をしていました。
良く多くの人が勘違いされるのが、「カラオケの音はCDからボーカルを抜き取った物だ」とか、「レコード会社からボーカル無しの音を提供してもらってそれを使っている」といった物がありますが、実は違います(2011年現在)。もちろん今の技術ではレコード会社からボーカル無しの音を提供してもらってそれを使う事も可能でしょう。しかしその場合にはカラオケメーカーはレコード会社に対し使用料を支払わなければなりません。

通信カラオケの機械から聞こえてくるあの音は実は「MIDI」で演奏されている音なのです。(一部生演奏を合成した物も登場していますが)
MIDIデータというのは、実際の音声データではなくいわゆる譜面データのようなもので、データの中には「この音階の音をこれぐらいの強さで発声せよ」とか「音量をあげろ」とか「ピアノの音色に切り替えろ」といった命令が並んでおり、これに時間情報を伴わせ、それに従ってシンセサイザなどの機器に情報を次々と送り出すことにより音楽を演奏する、ということを行っています。

さて、そのカラオケ用のMIDIデータでありますが、実は「カラオケ職人」と呼ばれるその手の職人により1曲1曲、手作業で制作されています。今現在の技術では、たとえばCDなどの音楽をMIDIデータに完璧に変換する事は不可能で、職人たちはいわゆる「耳コピ」という技術と「打ち込み」という技術を駆使して、発注を受けた曲をMIDIデータとして作り直しているわけです。

私も過去10年ほどその仕事をしていました。発注があると事務所から電話が入り「今からMP3を送りますので○月○日までに制作をお願いします」というような事を言われます。そしてここからが地獄の耳コピ作業が始まるわけです。

その耳コピ作業ですが、元々の曲をできるだけ忠実にMIDIで再現するためには元の曲が良く聞こえる環境で作業をする必要があります。なぜならばどんなに些細な音でも聞き逃してはならないからで、もし完璧に耳コピができていないのならばリテイク(やりなおし)を命じられます。当然、できるだけ音の良いオーディオインターフェースに音の良いアンプをつなぎ、音の良いヘッドフォンやスピーカー、という事になるわけですが、私はこの仕事を始めてから数年の間は家電量販店で売られている1万円前後のヘッドフォンを使っていました。

もちろんそのヘッドフォンで十分だと思っていましたし、仕事も問題なくこなせていたのですが、ある時お世話になっていた検収の方から「MDR-CD900STというヘッドフォンは音が非常に良く聞こえて耳コピでとても役に立ちますから是非手に入れてください」との序言をいただいたのをきっかけに、ヘッドフォンの買い換えを検討するようになりました。

同時に、当時私と同じ仕事をしていた仕事仲間の方が実際にMDR-CD900STをもってきて音を聴かせてくれる機会があり、初めてその音を聴くことになったのですが、私はその音を聴いて非常に衝撃を受けたのを今でもはっきりと覚えています。

「なんだこの生々しい音は!」

というのが、第一印象でした。
確か、一番初めに聴いた曲が女性ボーカルのバラードだったと思うのですが、息が声帯を通ってくる音、ドラムのゴーストノートまで、クッキリ、ハッキリと聞こえてくるわけです。これにはさすがに腰を抜かしました。

次に聴いた曲が某ビジュアル系バンドのわりと激しい曲だったと思うのですが、このときもいろんな音に埋もれて聞こえづらいギターの音が手に取るようにはっきりとわかったのです。

「これは買うしかない」

こうして私はMDR-CD900STの虜になってしまい、「これから一生使い続けるであろうヘッドフォンはMDR-CD900ST以外にあり得ない」、となってしまったわけです。

前置きがとても長くなってしまいましたが、これが私のMDR-CD900STとの初めての出会いです。

パッケージ

家電量販店で売られているヘッドフォンは派手なデザインのパッケージに梱包されていることが多いですが、MDR-CD900STのパッケージは違います。シンプルな白い箱です。箱のどこを見渡しても「迫力の重低音!」、「抜群の臨場感!」などといったうさんくさい宣伝文句は見あたらない事からもメーカーの自信がうかがえます。また、プラグも金メッキプラグのような洒落た物ではありません。

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デザイン

はっきり言ってしまえば、このヘッドフォンは完璧に業務用で、オシャレなデザインではありません。しかし、このヘッドフォンが必要になるシーンは主に屋内ですし、実際に装着してしまえば見た目なんてわかりませんからこれで十分です。また、業務用なだけあって、右と左との区別にはLとRのプリントのほかに赤と青で目立つように色分けされています。

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頑丈さ

業務用のヘッドフォンですから、頑丈さも求められます。このヘッドフォンは強度が必要な箇所には金属製の部品が使われています。もちろん足でわざと踏んだり、蹴飛ばしたりしたら壊れるでしょう。しかし、普通に使う分には多少雑な扱いをしても大丈夫なようにできています。

このように金属製の部品で作られている箇所がある。

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ネジ止めされていてしっかりとした作りになっている。
「MADE IN JAPAN」というのもポイントが高い。

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プラグの根本には断線防止のためのバネがついていて、
ケーブルの耐久性が高められている。

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音質

商品カテゴリにも「モニターヘッドフォン」とあるように、このヘッドフォンはリスニング用というよりはモニター用として設計されています。では、「モニター」とは一体何なのか。かなり大雑把な言い方をしてしまうと「音の粗探し」ということです。

個性が無い事が個性だ

普通にリスニング用として家電量販店などで販売されているヘッドフォンはかなり音に味付けがされており、メーカーやモデルによって様々な個性があります。中でも重低音がより出るような設計がされていたり、逆にハイサンプリングレートの音楽ソースの観賞用に超高域の再生に優れているということを宣伝文句としているヘッドフォンがあります。ところがこのヘッドフォンにはそのような宣伝文句は一切ついていません。あくまで機器からでてきた信号がそのまま再生されます。言い換えれば「個性のない音」です。しかしそれがこのヘッドフォンの個性であるのです。

音楽を制作する場合、音の粗探し、つまりは聴いておかしい箇所やわずかな雑音でさえしっかりととらえる必要があります。そのような場面ではもはやヘッドフォン独自の味付けは不要なわけです。

悪い音はちゃんと悪く聞こえるというのは重要である

また、家電量販店で販売されているヘッドフォンは音があまり良くない音源ソースでもかろうじて良い音で聞こえるように味付けされていますが、このヘッドフォンはそういう味付けは一切されておらず、悪い音ははっきりと悪い音として聞こえます。もちろん逆も然り。ですから悪い音源ソースを再生して「なんだこのヘッドフォンちっとも音が良く無いじゃないか!」と言うのは早とちりです。

たとえば一般にMP3やYouTubeにアップロードされている音源は無圧縮音源に比べて音が悪いと言われます。これをほかのヘッドフォンで再生してみると、MP3の音の悪さがヘッドフォンによりうまくごまかされてそこそこ聴ける音になります。ところがMDR-CD900STでは音が悪いMP3はそのまま音が悪いMP3として聞えます。

これは音が悪いオーディオ機器にも言えることで、ほかのヘッドフォンではそもそもオーディオ機器から発せられるノイズが聞えないことがあるのに対し、MDR-CD900STでは機器から発せられるノイズがきちんと聞えます。

迫力の重低音は出ません。

よくヘッドフォンの宣伝文句として耳にするのが「重低音」。
ところがこのヘッドフォンは一般のヘッドフォンと比べて重低音は出ません。しかし、いわゆる「締まった低音」が出るため、低音が濁ることなく聞えてきますし、ストレスを感じる事はありません。

リスニング用途には向かないと言われていますが

このヘッドフォンは音楽を制作する現場の人用で、聴く人には向いていないという意見を耳にします。ある意味正しいでしょう。というのも、解像度、情報量の多さからありとあらゆる音が耳に飛び込んでくるため、慣れていないと聴き疲れしてしまうということもあるでしょうし、最初は低音の物足りなさを感じるかもしれません。

実際にネットを見ているとこのヘッドフォンで音楽を30分も聴いていると苦痛を感じる、という方もいらっしゃるようです。

では音楽鑑賞に全く使えないかというと、そんなことはありません。実際私はこのヘッドフォンをiPodでも使用していますし、それで実際に音楽を楽しんでいます。また、解像度や情報量の多さから、新譜を聴く度、また古い音楽を聴き直す度に新たな発見もあります。むしろ、このヘッドフォンに慣れてしまうとほかのヘッドフォンに行けなくなります・・・。

明らかにこのヘッドフォンで聴いて心地よいと感じた楽器

  • エレキベース・・・ベースは低音楽器ですが、実は倍音を多く含んでおり高音も沢山出ています。このヘッドフォンの場合倍音もふくめてきっちりと出てきますのでかなり厚みのあるベースの音が聞けます。
  • ドラム・・・抜けがよいスネアやキックの音をこのヘッドフォンで聴くと非常に心地よいです。音源によってはドラムを収録する際の部屋鳴りまでしっかり聞えます。
  • アコースティックギター・・・生々しいです。ボディの内部での共鳴、プレイヤーの指使いまでしっかり聞えます。
  • 女性ボーカル・・・これも生々しいです。息づかいがはっきりと聞えるのはもちろんのこと、耳元で歌っている感じがします。

語学の学習にも最適

実は解像度の高い事のメリットはほかにもあります。
それは語学の学習において、ネイティブスピーカーの発音がはっきり、しっかりと聞えてくるということです。実は私は7年ほど前から英会話の学習をしており、教材としてPodcastや外国の映画などを利用していますが、もちろんMDR-CD900STを利用しています。

MDR-CD900ST未体験の知人K氏にこれで音を聴かせてみた時の反応

K氏は、普段はiPodに付属のイヤフォンは使わずにわりと高めのカナル型イヤフォンを使っています。

私「iPodにおすすめのヘッドフォンがあるんだけど聴いてみる?」

K氏「おお、これか。なんかゴツイね」

私「じゃあ、聴いてて。ポチ(とりあえず適当な曲を再生)」

K氏「おお・・・・おおっ?・・・・・おおおおおお! すげー!!」

購入に関しての注意

MDR-CD900STには標準プラグしか付属しません。
iPodなどでこのヘッドフォンを使用する場合にはミニプラグから標準プラグへ変換するためのアダプターを購入する必要があります。その際、iPodケースなどを使用している方は先が細いアダプターを使わないとプラグがiPodの奥までしっかりと刺さらないことがあるので注意してください。

 

iPodケースによってはこのように根本まで刺さらない事がある。
当然正常に再生されない。先が細いアダプターを入手する必要がある。

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また、購入直後で新品の状態では予想以上に低音と高音が出なくて耳がつまったような音がします。しかしエージングすることにより徐々に出るようになってきますので、購入直後に「なんだこれは~~!!!(怒)」といって窓から投げ捨てないでください。

総評

まず、音楽を制作される方や楽器を演奏される方には間違いなくお勧めです。
値段は15000円前後ですが、それ以上の価値があります。また、語学の学習をしている方にもお勧めです。音楽鑑賞に関しては、人によりさまざまな意見があるため、私はここではハッキリとは「お勧めです」とは言いません。
しかし私自身はこのヘッドフォンで音楽鑑賞をバリバリ楽しんでいますし、iTunes Music Storeで新譜を買う頻度も明らかに増えたことをお伝えしておきます。

ICON DIGITAL社のCUBE Gの不具合について


G4からIntel iMacにDAW環境を移行するにあたって、3月11日の地震が発生する直前にサウンドハウスにオーディオインターフェースを発注しました。G4では PCIスロットにオーディオインターフェースを挿して使用していたのですがiMacにはPCIスロットがありませんのでUSBかFireWireのオーディオインターフェースを用意する必要があります。そこでいくつかの製品の中から私の条件に合う中で安価でコストパフォーマンスが高い物を選び発注しました。

そしてこれが今回発注したiCON DIGITAL社のCUBE Gです。Mac miniに似たデザインですが、実際にはMac miniよりも一回りほどサイズが小さく、本体上部の白い通電ランプがなかなかイカすデザインであります。

CubeG_Top.jpgCubeG_Front.jpg

私の制作環境で必要最低限の条件が、

  • 24ビット/96KHzで録音・再生が行える。
  • アナログ4入力、もしくはアナログ2入力+S/PDIFを1入力備えている。

ですので、この条件を満たすオーディオインターフェースでなるべく安価な物を検討し、その結果iCON DIGITAL社製のCUBE Gを購入したのですが、このインターフェース、ただの音楽鑑賞には使えますし、音質も値段以上なのですが、DAWに使用しようとするとブチブチと音切れを起こし、使い物になりませんでした。

具体的には、

  1. Digital Performerで24bit/48KHzとか、24bit/96KHzなどでプロジェクトを作成する
  2. モノラルトラックを作成し、ギターを録音する
  3. Live Room Gでキャビネットをシミュレートする。
  4. ProVerbでリバーブをかける

たったこれだけで、不規則に「プチ・プチ」という音の途切れが発生し、さらに同様のトラックを5本も作れば、「ブチブチブチブチ」とすさまじい音切れを起こして実際の音楽制作にはまったく使い物にならなくなるという状況です。サンプリングレートを減らしてみたりバッファサイズを大きくしてみても改善しません。(むしろバッファサイズを大きくすることによりもっと不安定になることもある)

 

実際に不具合が発生するプロジェクト。バッファサイズは2048サンプルと大きめ。
トラックの本数は画面に表示されている分だけで、CPU負荷も高くない。

trouble_project.png

実際の音楽制作ではもっとたくさんのトラックを使いますし、プラグインももっとかけます。
これだけで音切れが発生するということは、DAW目的には全くといっていいほど使えないという事です。

確かにUSBオーディオインターフェースはCPUに負荷がかかると不安定になるという話は聞きますが、今回の場合、ほとんど負荷はかかっていません。また、オーディオインターフェースをBEHRINGERのUCA222(V-AMP3を購入したときのおまけについてきたもの)に変更してみますといくら負荷をかけようがバッファサイズを小さくしようが安定して動作することから、やはりこれはCUBE G自体の問題である可能性が高いです。

Digital Performer以外のソフトではどうか、と試しにGarage Bandで使ってみました。すると、ソフトシンセで手弾きをした際に微妙なタイミングで「プチ、プチ」と音が途切れることがあります(泣)

では・・・MacではなくWindowsではどうか、ということでWindowsマシンに接続してギターを適当に弾いて録音してみたところ、録音の段階で微妙に音を取りこぼしている感じです(涙)

そこで、サウンドハウスのサポートにダメ元で連絡を取ってみました。実はこの製品を受け取ったのは地震発生数十分前、箱を開封する前に地震が来てしまったため、1週間以上動作確認どころか中身を確認することすらできませんでした。通常なら返品期間も過ぎている筈なのですがサウンドハウスのサポートの人は親身になってサポートしてくださいました。

とりあえずは一度日本での販売代理店であるフックアップと連絡を取ってみるように言われたため、現在フックアップと交渉している段階です。

音質は値段以上に素晴らしい

では、不具合が発生したからこの製品はまったくだめなのかというとそうではありません。

iTunes で音楽を再生する分にはまったく不具合が発生しません。また、本体にモニター用のヘッドフォン端子が装備されているため、音質劣化の原因となる外部のアンプなどを通さずに直接ヘッドフォンでモニターできます。この状態でiTunesで音楽を鑑賞するとこの製品の良さが分かります。

Macの内蔵オーディオで聴く音楽はヘッドフォンに楽器がへばりついているような平べったい印象を受けるのに対し、このCUBE Gで聴くときちんと奥行きが再現されるのです。

ただし、値段相応に削られている機能もある。

ダイレクトモニタリングができない

まず、ダイレクトモニタリングができません。ソフトウェアモニタリングのみです。

たとえば、入力端子にギターを接続し演奏したとします。そうするとその信号はいったんコンピュータに取り込まれてなんらかの処理をされてから再びオーディオインターフェースに戻ってきて、やっとモニタできる状態になるのです。つまり入力から出力までの遅れがあります。そして、なぜかバッファサイズをいくら小さくしても改善しません。(他のオーディオインターフェースならバッファサイズを小さくすると負荷が上昇する物の実用レベルまで改善します)

従って、ダイレクトモニタリングをしたい場合にはミキサーを別途用意し、ソフトウェアモニタリングをOFFにした上で、ミキサーでモニターしつつ、AUX SENDなどで録音したい信号をオーディオインターフェースに送ってやるという処置が必要です。

しかし、この製品をUSBポートに接続したり、Macがスリープから復帰した場合、問答無用でソフトウェアモニタリングが毎回有効になってしまいます。ですから、普段からミキサーでモニターをしている方は毎回音楽制作の開始に先立って、手動で「iCON Control Panel」なるものを開き、ソフトウェアモニタリングを切ってやらなければなりません。

Icon Control Panel
私の場合はこれを毎回音楽制作に先立ち起動して
ソフトウェアモニタリングを無効にする必要がある。

iconcpl.png

本体からUSBケーブルに放出されるノイズがハンパない

この製品の動作中は、Macの内蔵オーディオにすさまじいノイズが混入します。
CUBE Gで発生したノイズがUSBケーブルを伝ってMacに戻り、Macのオーディオアウトから出てくるという感じです。まるで嫌がらせかなにかのように・・・。

製品自体はとても素晴らしいので

しかしながら冒頭で申し上げた不具合が発生しなければまったくもって素晴らしくコストパフォーマンスが高い製品であるため、フックアップ社のサポートと交渉しつつ不具合が解消された場合には改めてレビューをさせていただきます。

同様の不具合を抱えている方のコメントをお待ちしております。

iMac+Digital Performerでこの製品を現役で使用されている方で、「俺も不具合が発生した!」という方、もしくは「俺は全然平気で使えているぜ!」なんて方からのコメントもお待ちしております。私は本気で困っています・・・。

TUBE MPの真空管を交換 ~結果、ノイズが激減~


TUBE MP改善計画 第2弾

本日は前回のコンデンサ交換に引き続き、TUBE MPの真空管の交換ネタでございます。

前回のコンデンサ交換では、小さな音にまとわりつくザラザラとしたノイズが無くなったのですが、依然としてホワイトノイズ(熱雑音)がかなり残っていましたので、ひょっとしたら犯人は真空管かも? と狙いを定めていたわけです。

早速真空管を購入

これが今回購入した真空管「GT-12AX7R」です。サウンドハウスから取り寄せました。スペック的には12AX7です。Groove Tubesは主にギターアンプ用の真空管を取り扱っている業者なのですが、数多くの真空管の中からクオリティや特性ごとに真空管を一本ずつ厳選して販売しているそうです。

なお、Groove Tubesで取り扱っている真空管はオーディオ用としても広く使われている真空管ですので、ギターアンプにしか使えないというわけではありません。

GrooveTubes-12AX7-R.jpg 古い真空管(左)と新しい真空管(右)
よく見るとゲッター(真空管上部の銀色に光っている部分)が古い真空管では残り少なくなっている事がわかるとおもいます。このゲッターと呼ばれる物は、真空管内部で発生するガスを吸着することで真空度を保つ役割があるそうなのですが、真空管を使い込むとこれが徐々に少なくなってきて、しまいには真空度を保てなくなり性能が落ちていくそうです。

12ax7.jpg

真空管の交換は電球の交換並に簡単です
 と、その前にTUBE MPの分解方法ですが、至って簡単です。両側面のネジを外すと本体が簡単に開きます。注意点は、ネジを外した後に後ろ側(コネクターが並んでいる方)から開くことです。このとき、開きづらいからといって力任せに開けようとすると中のフラットケーブルが切れます。(開きづらいのはこのケーブルのせいです)
tubemp_open.jpg
 TUBE MPを分解するとソケットに装着された真空管が見えます。これを慎重に引き抜き、新しい真空管を差し込みます。注意する点ですが、使用直後の真空管は高温になっています。火傷防止のために真空管に触れる場合には電源を切ってしばらくしてから触れて下さい。
tubemp-inside.jpg真空管を装着した後は分解した時と逆の手順でTUBE MPを組み立てます。

ホワイトノイズが激減!

 では早速試聴といきましょうか。
今回はギターからTUBE MPに直接接続し、その後は何もエフェクターを接続していません。つまりTUBE MPは単なるDI兼プリアンプとして動いています。ピックアップはシングルコイルにセット。簡単なアルペジオを弾いたものを古い真空管と新しい真空管の両方で録音し、比較しました。
 なおパソコン用のスピーカーなどではノイズが聞こえない場合があります。その場合にはモニターヘッドフォンなどをご利用下さい。

古い真空管

新しい真空管

 いかがでしょうか?
新しい真空管の方は、若干音がクッキリして明るくなっていませんか?
さらに古い真空管のほうではハッキリと「サーーーーー」というホワイトノイズが目立つのに対して、新しい真空管の方ではホワイトノイズが激減しています。なお、「ボーーーー」という音はピックアップのノイズでありTUBE MPのノイズではありません。

TUBE MPは改造の土台にもってこいの機材です


 
かつては定価が26000円ちょいだったTUBE MPですが、現在はサウンドハウスにて5,800円で売られています。私は560円でコンデンサを取り替え、2000円で真空管を取り替えました。3000円以内の出費で音がかなりクリアになりノイズが少なくなったので、これはコストパフォーマンスが高いと言わざるを得ないのではないでしょうか。
 また、音楽をやらない人でも個人でのネットラジオ配信を行っている人は多いと聞きます。そして、ワンランク上のマイクをそろそろ・・・と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そういった方々にもおすすめできる機材です。(改造の有無は関係なしに)
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